鍼灸マッサージの保険請求は、法律や厚生労働省の取扱いに基づいて運用されています。
現在は「受領委任払い」という仕組みが採用されており、患者さんは自己負担分のみを支払い、残りの費用は施術所が保険者へ直接請求します。
この取扱いは、平成31年1月1日から、それまでの「代理受領委任払い」から変更されました。
この変更により、請求のルールや必要書類が整理され、より厳格な運用が求められるようになりました。
受領委任払いに変更された背景には、厚生労働省による運用の見直しがあります。
主な理由としては、「患者負担の軽減」や「療養費の適切な請求」が挙げられています。
一方で、現場の視点から見ると、もう一つ重要な流れがあります。
もともと鍼灸マッサージの療養費は「償還払い」が原則であり、患者さんがいったん全額を支払い、後から払い戻しを受ける仕組みでした。
しかし実務では、民法上の委任の考え方をもとに、患者さんに代わって施術所が保険請求を行う「代理受領委任払い」が広く運用されてきました。
さらに、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の方々による「医療機関と同様に、窓口で自己負担分のみを支払えばよい形(現物給付)に近づけたい」という取り組みがあり、その結果として現在の受領委任払いへと移行していったと考えられます。
2.対象になるケース
鍼灸マッサージの施術がすべて保険請求の対象になるわけではありません。
一定の条件を満たした場合に限り、療養費として支給されます。
主な条件は以下の通りです。
医師の同意があること
保険請求を行うためには、医師の同意書が必要です。
同意書には、対象となる傷病名や施術の必要性が記載されます。
適応となる症状であること
鍼灸は、神経痛・リウマチ・腰痛症など、慢性的な疼痛緩和施術が対象で、マッサージは傷病由来の筋麻痺・筋萎縮、関節拘縮の緩和施術が対象です。
単なる疲労回復やリラクゼーション目的の場合は、保険の対象外となります。
よくある注意点
実務では、同意書の有効期間や再同意のタイミングなどで迷うケースが多く見られます。
これらのポイントを理解していないと、返戻の原因になるため注意が必要です。
3.請求の流れ
① 同意書の取得
医師による同意書を取得します。
同意書は、患者さんを通じて取得する場合と、施術者が患者さんの依頼により医療機関へ代行依頼する場合等があります。
② 施術の実施
同意書の発行日以降に施術を行い、その分が保険請求の対象となります。
③ 自己負担金の受領
患者さんから自己負担金(1割・2割・3割)を受け取ります。
支払い方法は、施術ごとに受け取る場合と、月末にまとめて受け取る場合があります。
④ 申請書の作成
施術内容に基づき、療養費支給申請書を作成し、それに患者さん(被保険者さん)のサインをいただきます。
受領委任払いの場合、振込口座は施術所(または施術者)の口座を指定します。
⑤ 総括票の作成
申請書をまとめるための総括票を作成します。
⑥ 書類の整理
総括票・申請書・同意書を重ね、ホッチキスでまとめます。
⑦ 保険者へ提出
作成した書類を保険者へ送付します。
※保険者によって送付先が異なるため注意が必要です。
例:東京都後期高齢者医療や国民健康保険の場合は、東京都国民健康保険団体連合会(東京国保連)へ提出します。
※また、保険者ごとに提出期限(締切日)が設定されているので注意が必要です。多くの場合は毎月10日頃となっています。
⑧支給(振込)
保険者サイドの審査を経て、通常は申請から約2か月〜3か月後に、請求金額が指定した口座へ振り込まれます。
※書類の不備や提出遅れは、審査での返戻や支給遅延の原因となるため注意が必要です。
4.よくあるミス
鍼灸マッサージの保険請求では、書類の不備による返戻が多く見られます。
ここでは、特によくあるミスを紹介します。
同意書のミス
同意書に関する不備は非常に多く、注意が必要です。
- 同意区分の記載漏れ(初回同意か再同意かに〇がない)
- 診察日の未記載、または同意日より後の日付(無診察同意と判断される)
- 同意日の年号誤り(例:令和7年2月など過去の日付)
- 医師の住所・押印が不鮮明で判読できない
申請書のミス
申請書についても、基本的な記載ミスが返戻の原因となります。
- 署名の誤り(被保険者名ではなく、受療者名や代筆者名になっている)
- 同意書の有効期間が切れている(月の前半・後半ルールの認識不足)
- 原因欄の記載不備(原因や経過が記載されていない)
これらのミスは、審査において返戻や支給遅延の原因となるため、提出前の確認が非常に重要です。
5.まとめ
鍼灸マッサージの保険請求は、医師の同意書に基づき、定められた流れに沿って行われます。
一見すると複雑に見えますが、「同意書の取得」「施術の実施」「申請書の作成・患者さんのサイン」「保険者への提出」といった一連の流れを正しく理解することで、適切に対応することができます。
また、同意書や申請書の記載内容に不備があると、返戻や支給遅延の原因となるため、提出前の確認が非常に重要です。
特に実務では、同意書の記載ミスや有効期間の確認漏れ、申請書の記載誤りなど、基本的な部分でのミスが多く見られます。
こうしたポイントを押さえておくことで、スムーズな保険請求につながります。
今後は、実務でよくある疑問や注意点についてより詳細に分かりやすく解説していきます。

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